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温かみのある作品で、注目を集める鉄工芸工房。

ギャラリーRショップ(福島市)

夫婦2人で営む、福島市の鉄工芸工房。それまで鉄工所を経営してきた長沢貢さんが、2002年にオープンさせたお店です。堅く冷たいイメージのある鉄を使いながら、温もりや親しみやすさの感じられる作品を手掛けており、このことからさまざまなメディアの注目を集めるようになりました。オーダーメイドによる鉄工芸品の製造と販売を中心に、インテリアや懐古調家具の製造と販売も行っています。

堅さや冷たさを超越した、鉄の自由度と表現力。

ご主人の長沢貢さんと奥様の幸子さんが営むギャラリーには、100点を超える作品が展示され、一部は屋外にも設置されています。店内にお邪魔するまでに、レリーフが施されたゲート、壁に取り付けられたランプなど、多彩な作品が私たちを迎えてくれました。

長沢さんの作品には、独特の優しい雰囲気が漂っています。柔らかい曲線、光沢を抑えた質感、木や紙との組み合わせなどが温かみを感じさせるのでしょうか。細かい凹凸やサビが浮いた表面も、その作品ならではの個性に思えてきます。何も知らずに見ると、それが堅く冷たい鉄であることに気付かないような、不思議な親しみやすさが感じられました。

どうしてこういうものづくりを始めたのか、長沢さんに尋ねてみました。

「何かを表現したいと思ってたんだけど、そこに鉄工の技術があったからね」と長沢さん。聞けば約30年にわたって鉄工所を経営していたのだとか。バブル崩壊で会社をたたんだ後、長年培った技術を生かして自己表現に挑もうと決めたそうです。50代半ばからの挑戦でした。

当時どうしようかと悩んでいた長沢さんを、鉄工芸家の道へと後押ししたのが奥様。聞き上手な印象は、話し好きの長沢さんと好対照です。遠く県外からもオーダーメイドのお客様が来るらしく、その話し合いの段階から仕事を楽しんでいる様子がうかがえました。

しかし、そんなやり取りも、東日本大震災から半年ほどは途絶えてしまったそうです。「社会から孤立するのがつらかった」という長沢さんですが、その経験を糧に、現在では古代文字を鉄工芸で表現しようと、新たな創作活動への意欲を燃やしています。

最後に、店名の「R」の意味を聞いてみると「息子の名前の頭文字」という答えが。深い意味はないそうですが、お店を家族のように大切にしていることは伝わってきます。もしかするとこれらの作品も、ご夫婦の子どもたちのようなもの・・・なのかもしれません。

熱と炎を見極めながら、叩いて叩いて思いを形に。

鉄工芸家/長沢 貢 さん

長沢さんが腕を振るうのはギャラリー隣の工房内。鋳造ではなく鍛造という技法を駆使し、ハンマーで叩いて叩いて思い通りの形に仕上げていきます。バーナーで鉄を熱しても、曲げられる温度が保たれるのは数秒間。熱し過ぎると溶け落ちてしまうため、炎と鉄の状態を見極めながら慎重に作業を進めていきます。サビだらけでも、叩くことで生き返るのが鉄の魅力なのだとか。そう語る横顔に、鉄に惚れ込んだ男の笑みが浮かんでいました。

ギャラリーRショップ

代表者:
長沢 貢(ながさわ・みつぐ)
店舗所在地:
福島市黒岩字北井33-1
連絡先:
024-546-0421
事業内容:
鉄加工、インテリア制作、オーダーメイド家具制作
創業:
2002年
従業員数:
2名
HP:
http://r-shop.sakura.ne.jp